久しぶりの更新です。

 既にいくつかのエントリーで、レガシー(デスタク)のデッキ構成とサイドボードについて解説をしました。
 しかし、それらのデッキを十分に機能させるための手札選択については何も触れていませんでした。

 デスタクは「マナを締める」という方向、「呪文や能力を阻害する」という方向、その後の「盤面を制圧する」という方向、「相手の妨害をかわす」という方向、最後の「勝ちに向かう」という方向の5つの方向性を持っているデッキです。
 例えばカナスレのような、クリーチャーを出し、相手を打消しで止め、火力でどかして殴る、のような単体のカードによる勝利への連続性があるわけではありません。

 また、カード1枚1枚が複数の役割を与えられているのもデスタクの特徴です。
 相手の除去をかわすためのルーンの母が殴打頭蓋を背負ってフィニッシャーになる、除去をかわす目的のちらつき鬼火で相手のマナを縛って呪文を通す、妨害手段のサリアとKarakasで相手の攻撃を受け流す、などその時にあるリソースをフル活用して対応する知識と経験が必要になります。

 そして、このデスタクというデッキの致命的な弱点は、カードアドバンテージを取ることが極めて難しいということです。例外的にアドバンテージが取れるカードは、石鍛冶、ちらつき鬼火、赤青剣くらいでしょうか。
 そのため、一度失ったカードアドバンテージはゲーム終了まで引きずることも多く、マリガンを含めた最初の3ターンの行動を誤るとそのまま負けにつながるデッキと言えます。

 これらから、まず最初に配られる7枚が「どの」方向を向きたがっているかはマリガン選択において非常に重要な要素となり、また、対戦相手によってどの方向の手札をチョイスしなければならないかも変わってきます。


 それではケーススタディを交えた手札のキープ基準を考えてみたいと思います。

1.土地の枚数と色マナの確保
 極論から言いますと、デスタクは「不毛の大地」1枚からでも勝つことができるデッキです。対戦相手がNicFitであるゲーム2の後手で、私はこのような手札をキープしました。

1 不毛の大地
2 霊気の薬瓶
1 ルーンの母
1 スレイベンの守護者、サリア
1 ヴリンの翼馬
1 剣を鋤に

 この手札は、白マナソースを1枚引き込むことで全ての呪文を展開することができ、かつ、引き込めなくても霊気の薬瓶でクリーチャーを展開することができます。相手の衰微は怖いですが、霊気の薬瓶が2枚あることでその部分もしっかりケアしています。NicFit特有の探検者によるマナランプも、スクリューしているこちらに分があります。罰する火による火力ループも不毛の大地があるためとりあえず止まっています。
 結果として、この後も有効なクリーチャーを引き続けたこと、燃え柳の木立ちを破壊したことでNicFit側が物量を捌ききれなくなりました。

 このように、相手のデッキを熟知していること、ゲーム展開を予測できることによって意外な手札がキープできたり、大丈夫と思われる手札がキープできなかったりします。この辺りがモダンやスタンダードフォーマットよりシビアに問われる部分となります。


 さて、冒頭の極端な例は置いておき、一般的なデスタクにおけるキープ基準について土地をベースに考えてみます。盤面の簡略化のために「先手」「1ゲーム目」「相手デッキは不明」とします。

土地が0枚、1枚の場合:
 基本的にキープはできません。メインデッキの土地23枚として、1ドローにおける土地の期待値は0.4枚程度ですので早くて2ターン目、遅くても3ターン目にマナスクリューを起こす未来が見えます。
 1マナでのアクション(薬瓶、剣を鋤に、ルーンの母)が2枚以上あったとしても後続が続かないようであれば対処されてしまうためゲームをすることはできません。よく土地1枚+薬瓶からスタートし、薬瓶を割られて詰むプレイヤーがいますので注意しましょう。

土地が2枚、3枚の場合:
 白マナソースが1枚あれば最低限のキープ基準を満たします。最低限というのは、残りの手札がどの「方向性」を向いているか、相手のデッキに効果的な「方向性」を向いているかによってマリガン基準が決まるからです。
 白マナソースがない2枚(不毛の大地orリシャーダの港)の場合、前述の1枚と同様にキープはできません。例外的に、後手番+2マナ+薬瓶+破棄者+十手のような手札であればチャレンジしてみても良いかもしれません。

土地が4枚の場合:
 この場合、土地の内容がどうかによってもキープ基準が変わってきます。平地3+Karakasのような平たい構成の場合、残り3枚のカードに頼ったゲーム展開を強いられることになるためキープをするのは厳しくなります。
 逆に、不毛の大地+リシャーダの湊+平地2といった構成であれば、呪文としてカウントできる土地が2枚あるため理想的な手札配置であるといえるでしょう。

土地が5枚以上の場合:
 逆に手札の呪文が少なすぎてゲームを作るのが難しくなります。相手のデッキがわからない以上、効くかわからないカード2枚からスタートするより、マリガン後の6枚占術の方が戦略を立てやすくなります。


2.手札と相手デッキの方向性
 ここからは、前述のキープ基準を満たしたうえで、本当にキープできるかどうかの判断基準について説明していきます。最近活躍しているデッキを仮想敵とし、キープ基準となりえるキーカード、役に立たない不要カードについて考えてみます。

・青白奇跡の場合
 対戦相手はレガシーデッキのうちでも多くの土地を搭載しており、マナを締める戦術は取りにくい相手です。また、打消し呪文と相殺独楽というギミックを持つため、呪文としてカードを通していくのが難しい相手でもあります。
 しかし、対戦相手のデッキにはクリーチャーがほぼおらず、呪文を阻害する戦術は非常に有効に作用します。また、渦巻く知識などのドローカードを多数搭載していることから、ドローを阻害する迷宮の霊魂の有効性が極めて高くなります。

 以上より、有効なカードと無効なカードは以下のようになります。
有効:薬瓶、サリア、翼馬、破棄者、迷宮の霊魂、殴打頭蓋(石鍛冶)
有効(サイド):法学者、真髄の針、爆薬、解呪、大変動など
無効:剣を鋤に、ちらつき鬼火、ミラディンの十字軍


・スルタイ(BUG)デルヴァーの場合
 対戦相手は18枚前後と土地が少なく、軽コストのカードで動こうとしてきます。また、デルヴァーというクリーチャー選択の性質上、スペルが多い構成になっています。そのため、マナを締める戦術、呪文を阻害する戦術ともに有効な戦いやすい相手です。
 問題となるのは、ピッチカウンターである目くらましとFoW、マナ源である死儀礼、ハードビーターであるタルモです。

有効:薬瓶、サリア、翼馬、迷宮の霊魂、十手・赤青剣(石鍛冶)、剣を鋤に、不毛
有効(サイド):太陽の槍、爆薬、RIPなど
無効:破棄者、セラの報復者、殴打頭蓋


・ANTの場合
 対戦相手は3ターン目にコンボを決めるデッキです。こちらのクリーチャーへの対処をしようという考えもありません。とにかく軽量な呪文を連打してマナを加速するという特徴があります。
 問題となるのは、少数ながら入っている手札破壊呪文です。また、先手後手で非常に勝率が変わるということも問題といえるかもしれません。有効なのは呪文や能力を阻害する戦術です。

有効:サリア、迷宮の霊魂、破棄者、先手なら翼馬・薬瓶
有効(サイド):法学者、RIP、墓掘りの檻、真髄の針、爆薬、大変動など
無効:ルーンの母、剣を鋤に、セラの報復者、ちらつき鬼火、石鍛冶セット


・エルフの場合
 対戦相手は2ターン目にクリーチャーの高速展開からコンボ圧殺を決めてくるデッキです。軽量な呪文、かつクリーチャーであるため、こちらから阻害できる要素が少ない不利な相手でもあります。
 その中でも問題となるのは、大量のマナ生成能力とチェインコンボです。垣間見る自然、遺産のドルイド、ワイヤウッドの共生虫を絡めた高速展開から自然の秩序へ繋げられると、即死が無かったとしてもほぼ負けとなります。

有効:剣を鋤に、破棄者、サリア、迷宮の霊魂、素引きの十手、不毛の大地
有効(サイド):法学者、封じ込める僧侶、爆薬、真髄の針、墓掘りの檻など
無効:ルーンの母、翼馬、ちらつき鬼火、石鍛冶セット


 上記のように、対戦相手ごとに必要とするカードが大きく異なるのがデスタクというデッキの特徴とも言えます。そのため、小さい大会においては対戦相手がどのようなデッキを使用しているかという事前偵察が非常に重要であり、常連がどのようなデッキを使うかを考えてメイン、サイドを構成するという「地域メタ」も非常に効果が高いと言えるでしょう。


中編に続きます。

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